しちごさん ~もちニキver~【1:2:0】

『新騎企画×夏シナリオ』にて、さくらもち兄(通称:もちニキ)にも一本書いてもらいました。普段小説中心なので台本はド初心者、許して(by兄妹)


出演人数 3~4

1:2:0 or 1:3:0

配役

珊瑚 (女):大学生

さんご(女):幼い珊瑚。珊瑚と兼任可

なな (女):大人びた言動の幼女。とても落ち着いている

いつみ(男):優しくて胡散臭い。年齢不問。神主と兼役

 

 

***

 

珊瑚(m):私は、幼い頃に神隠しに遭った。

珊瑚(m):まだ小さかった頃の話だけど、あの時のことは克明(こくめい)に覚えている。

珊瑚(m):あれは、酷く暑い初夏のこと。

珊瑚(m):七五三でとある神社に来ていた私は、物珍しさから神社を歩き回って迷子になった。

 

 

さんご:ここどこぉ……?ままぁ……ぱぱぁ……どこにいるの……?

さんご:ひんっ……グスッ……うえぇぇぇぇぇん!

 

なな :新顔ね?こんなところでどうしたの?

 

さんご:うえぇぇぇぇぇん!

 

なな :泣いてるだけじゃあ分からない。あなたの居場所はどこかしら?

 

さんご:(しゃくり上げる)あのね、ままとね、いなくなってね、えっと、えっとね……

 

なな : ……っ!帰りなさい!

 

さんご:っ!?

 

なな :帰りなさい!あなたはここにいてはダメ!ここまで来た道引き返しなさい!

 

さんご:で、でも……さんごどこからきたかわかんない……

 

なな :大丈夫。私が出口に送るから。

 

さんご:おうちにかえれる……?

 

なな :もちろんよ、ちゃんと送るわ。大丈夫。見られる前に早く行きましょう?

 

いつみ:(ななに被せ気味に)珍しい。

 

なな : ……!!

 

いつみ:こんなところにお客さん?

 

なな :迷い子よ。今から帰るところなの。

 

いつみ:そうなのか?ゆっくりしてけばいいものを……お嬢ちゃんもさ、遊びたいでしょ?

 

さんご:おにいさんだぁれ?(おにいさん部分は年齢で変化)

 

いつみ:ぼくいつみ。気軽に呼び捨てしてくれよ?

 

さんご:いつみおにいさん!

 

いつみ:賢い子だなぁ。一緒に遊ぼ?

 

さんご:うん!

 

なな :さんごちゃん、あなたはおうちに帰らなきゃ。さっき帰ると言ったばかりよ。

 

いつみ:少しなら良いじゃあないか、けちんぼめ。ななちゃんいつも厳しくないか?

 

さんご:おねえちゃんはななちゃんってゆうの?

 

なな :えぇそうよ。私はななという名前。とりあえず、そのお話は置いといて、さんごは私とすぐ帰るわよ。

 

さんご:いや!さんごいつみくんとまだあそぶ!

 

なな :あなたねぇ……!帰りたいんじゃなかったの?パパママ両方心配するわ!

 

さんご:いやーーーー!さんごまだあそぶもん!!!

 

いつみ:いいじゃない。そう珍しくもないんだし。小さい子供は遊びたいだろ?

 

なな : …………(ため息)私もう、どうなったって知らないわ

 

いつみ:良かったね、今から一緒に遊べるよ!

 

さんご:わぁい!さんごいつみくんとあそぶー!

 

いつみ:可愛いな。そんなさんごにプレゼント!美味しいお菓子を食べないかい?

 

さんご:おかし!?食べ──

 

なな :(食い気味に)食べちゃダメ!!!

 

さんご:!?

 

なな :食べちゃダメ。それは私のなんだから。

 

いつみ:1個だけだよ?別に良くない?

 

なな :そのお菓子、私にくれると言ったでしょ?嘘をついたら怒られるわよ。

 

いつみ:怒られる?怒る人などいないだろ?

 

なな :自称の神がいつでも見てる。

 

いつみ:あんなのを、僕は神とは呼ばないね。真似事ばかりのカラ人形が。

 

なな :あの人は私たちより上の人。何で怒るか分からないでしょ?

 

いつみ: ……まぁいいか。その口車に乗ったげる。

 

なな :得難(えがた)き恩に感謝をするわ。

 

いつみ: 別にいい。けれどもひとつ覚えてて。目をつぶるのは最初で最後。

 

さんご:ななちゃんたちなにおはなししてるの?

 

なな :お話は私といつみの話なの。あなたは何も知らなくていい。

 

さんご:さんごもひみつのおはなししたい!

 

いつみ:すねないで。今度は君にも教えるよ。

 

さんご:ほんとお!?おやくそくね!

 

いつみ:もちろんだとも。覚えておくよ。

 

なな :さんごちゃん、もう夕方よ帰りましょ。あまり遅いと帰れなくなる。

 

さんご:あっ……ままとぱぱ、おこってないかなぁ……?

 

なな :大丈夫。2人もあなたを探してる。早く帰ろう?みんな待ってる。

 

さんご:うん!さんごまた来るね!

 

なな :来なくていいわ。着いてきなさい。

 

 

 

珊瑚(n):ななちゃんに手を引かれ、私は無事に帰ってこれた

珊瑚(n):けれど、どれだけ探しても二度とななちゃんを見つけることはなかった。

珊瑚(n):ななちゃんがなんだったのかを知りたかった私は、大学生になってから歴史学を専攻して、地元の土着伝承(どちゃくでんしょう)を研究した。

珊瑚(n):調べた結果、どうやらあの神社は時の権力者のお墓の上に建てられたらしい。

珊瑚(n): 時の権力者が中国やエジプト王朝の真似をして、和歌を読んだ100人くらいと一緒に埋められたそうだ。

珊瑚(n):権力を誇示して神に成ろうとした権力者は、共に埋められた俳人たちの恨みを買ったらしい。この神社では時折呪詛のように俳句や短歌のリズムで喋る人が恨みを抱えたまま神社に留まっているという伝説がある。

珊瑚(n):彼らは「七五さん」と呼ばれ、「ワガママな子は七五さんに連れていかれてしまう」という脅し文句まであるということが分かった。

 

 

珊瑚 :もしかしたら、ななちゃんも「七五さん」だったのかも……なんちゃって。

 

珊瑚(n):益体(やくたい)もないことを考えながら、私は神社の鳥居をくぐる。鳥居をくぐると、辺りの雰囲気がガラッと変わったような印象を受けた。

 

珊瑚 :やっぱり神社って、なんか雰囲気あるなぁ。

 

神主 : ……珍しい、何度もここに来るなんて。雰囲気にでも魅入られました?

 

珊瑚 :うわっ!?びっくりした……!

 

神主 :驚かせたか、すみません。ここに来る女の人はいなくって。気になったので声掛けました。

 

珊瑚 :いえいえ!こちらこそ驚いてしまってすみません。ただちょっと、大学の卒業論文でこの神社のことを題材にしたので報告に。

 

神主 :それはまた……珍奇(ちんき)なこともあるものだ。

 

珊瑚 :ではこれで

 

神主 :お嬢さん、ちょっと待ってはくれません?

 

珊瑚 : ……?はい。

 

神主 :お神酒です。飲んで清めてくださいね。

 

珊瑚 :分かりました、いただきます。

 

珊瑚(n):飲んだ瞬間体が熱く、前後不覚に目が回る。

珊瑚(n):ただそれも、ほんの一瞬だけのこと。すぐに頭はクリアに戻る。

 

神主 :ではこれで。詳しい話はまた今度。

 

珊瑚(n):神主のそんな言葉を置き去りに、100の階段駆け上がる。成功祈願と報告のため。境内はそれほどかからず見えてきた。気持ちを込めてお参りをする。

 

珊瑚 :卒論のネタにしました!ごめんなさい!発表うまく行きますように!

珊瑚 : ……これでよし。あとは帰って見直しを……

    女の子?こんなところになんの用?

    ……見て見ぬふりはできないかぁ。

    そこの君?こんなところでどうしたの?

 

なな :っ……!?

 

珊瑚 :ねぇあなた、聞こえてるでしょう?返事して?

 

なな :なぜいるの……?

 

珊瑚(n):やっとこさ返事を返した女の子。その声色は震えてた。

 

なな :なぜいるの……?あんなに帰れと言ったのに……!

 

 

 

 

__________


全てのななといつみ(=神主)のセリフと御神酒を飲んでからの珊瑚のセリフは俳句(5・7・5)、短歌(5・7・5・7・7)、返歌(相手に対する返事の7・7)になるように書いているので、5か7の自然な位置で切るか、全く切らずに言うか、自然に行けそうな方でお願いします。

例:あなたはここにいてはダメ、というセリフの場合

○あなたはここに、いてはダメ

× あなたは、ここにいてはダメ

ななといつみは話し方に縛りがあるので、表現を増やしたければため息や吐息、息を飲む音などで感情表現を補完してください。

ブレスは完全に好きなように入れてもらえると、「色々な解釈が見れる!」と設定厨なもちニキが喜びます

花より桜餅

さくらもちの台本置き場 未完結ものアリ〼

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