お嬢様の想い人はエセ執事【2:2:0】

「お嬢様の想い人はエセ執事」

 

【あらすじ】

最近ボーっとして成績も下がり気味のお嬢様、萌音。萌音の専属執事である星野はその理由を探っていくうちに、萌音の抱える恋煩いが思いもよらない方向に暴走!?そして執事も思ってた執事じゃない!?登場人物全員(だいたい)がどこかおかしいラブコメディ。ここに開演

 

出演人数:4人(男2女2)

時間:30分(推定)

 

配役

◆星野(ほしの):執事。エセとガチとエリートの間くらいの執事。ちょっとアホ

◆萌音(もね):お嬢様、ほぼツッコミ

◆メイド:東(あずま)。お嬢様のことが大好き。星野のことは嫌い

◆料理長:トム爺。1番振り回されている。柔らかい口調だがガチムチ

 

 

* * *

(以下、本文)

 

萌音:ちょっと。紅茶が冷めたから淹れ直して

 

星野:2時間も放置するからでございますよ。全く、せっかくお淹れいたしましたのに

 

萌音:だって気分じゃなかったもの。そこまで高いお茶じゃないんだからいいでしょう?

 

星野:いいえ。本日の紅茶は特別なものです

 

萌音:どういうことよ

 

星野:なんと、茶葉を使ってございません

 

萌音:ほんとにどういうこと!?

 

星野:午後ティーをチンしたものにございます

 

萌音:手抜きすぎ!!!

 

星野:だってここ数日私めがどんなお茶を淹れようが手付かずだったではありませんか。あまりの手のつけなさに昨日はセンブリ茶を淹れていましたよ

 

萌音:それ私が飲んでたらどうしてたわけよ……

 

星野:無論横で手ェ叩きながら大爆笑でございますよ

 

萌音:人の不幸を笑いやがって!クビにしてやるアンタなんか!!!

 

星野:私より優秀な執事がいるんですか〜?

 

萌音:世界三大美女、言ってみなさい

 

星野:何を分かりきったことを。*卑弥呼《ひみこ》、*小野妹子《おののいもこ》、*星野瞳子《ほしのひとみこ》です

 

萌音:全員違う!子を付ければいいってもんじゃないのよ。男いるし。てか星野瞳子って誰よ

 

星野:私のガチ母親です

 

萌音:マザコンか!!

 

星野:失礼な。こうすることでお小遣いを2倍に増やした私のサバイバル術でございますよ

 

萌音:値上げ要求をサバイバル術とは呼ばない!!

萌音:あーもう!アンタと話してると疲れる!もういいから下がってて!!

 

星野:おやつにはレモンティーチンして差し上げますからねー

 

萌音:茶葉から淹れろぉ!!

 

* * *

 

 

星野:はぁ〜。最近のお嬢様、気づけばぼーっとしてますね。これで成績が下がろうものなら私お給料減額待ったなしです。それだけは避けたいのですが………

星野:そもそもどうして上の空なのでしょうか?

 

メイド:そんなの決まってますよぉ!*恋煩《こいわずら》いです!

 

星野:*東《あずま》さん。冗談言ってる暇があったら仕事をしてください

 

メイド:いーえ!これは女の勘ですよぉ。切なげに伏せるまぶた、小さくすぼんだ口から出るため息、なんの理由もないのに見る窓の外の景色、ぜーんぶ恋してる乙女のする行動そのものですぅ。あーん!*萌音《もね》お嬢様可愛い!

 

星野:きっしょ

 

メイド:星野さんに言われたくないですぅ。でもぉ、お嬢様のことそのままにしてたら成績下がるのは間違い無さそうですけどねぇ

 

星野:なんですって!

 

メイド:だってぇ、昨日帰ってきた小テスト、悲惨な結果でしたよぉ?

 

星野:(テスト用紙を握りしめながら)こ、これはなんという…!お嬢様、私に見せず隠しましたね!なんとあくどい!もうお母さん知りません!

 

メイド:いつからお嬢様のママになってるんですか私が許さないんですけど。

 

星野:急にガチトーンにならないでくれます。ちょっとしたジョークじゃないですか

 

メイド:ならいいんですよぉ!お嬢様がデレデレに甘える存在なんて*東《あずま》だけでいいですからねぇ。そのまま*東《あずま》にだけ甘えてくれて、*東《あずま》以外に頼れなくなっちゃえばいいんですぅ……んふふふふふ

 

星野:なんでこの人解雇されないんだろ……

 

メイド:ともかく、*萌音《もね》お嬢様の*恋煩《こいわずら》いを何とかしないと私まで解雇されちゃいますよぉ。ただでさえ目付けられてんのに

 

星野:ばっちり犯罪予備軍入りしてるじゃないですか。本当に*恋煩《こいわずら》いなんでしょうね?

 

メイド:絶対そうですよぉ。ほら早く、エリート執事ならちゃちゃっと解決してきてください。あ、もしかしてエセ執事の方でしたっけ

 

星野:絶妙に肯定も否定もできないのやめてください。

星野:別に、顔採用とかじゃないので

 

メイド:顔採用だったんだ………

 

 

0:(萌音の部屋)

 

 

萌音:はぁ〜〜

 

料理長:お嬢様、ワシの料理がお口に合わんかったかな…?

 

萌音:ううん!今日もとっても美味しい!いつもありがとう

 

料理長:何か悩みがあるならこの老いぼれに話してみてくれんか?誰にも話さんことを約束しよう。誰かに話すことによって、楽になることもあるんだよ

 

萌音:………あのね、実は気になってる人がいて

 

料理長:なんと!お嬢様に春が来たか!

 

萌音:まだ!まだ好きとかそういうんじゃ無いかもしれないんだけど、その………つい目で追っちゃうというか、気づいたらその人のことを考えているというか……

萌音:………なに、笑わないでよ

 

料理長:いやいや、純粋に嬉しくなったんじゃ。昔はずっと一人で抱え込む方だったからの。ワシに話してくれて嬉しかったよ

 

萌音:トム*爺《じい》なら…誰にも話さないし、からかわないでくれるって思ったからよ

 

料理長:もちろんじゃよ。ワシにとってお前さんは孫同然なんじゃ。応援させておくれ。

料理長:で、誰が好きなんじゃ?学校のクラスメイトかの?

 

萌音:……しの

 

料理長:ん?なんじゃて?

 

萌音:……星野が、好きなの……

 

料理長:星野って…………あの星野か!?あの!?

 

萌音:…そうよ。

 

料理長:星野…かぁ………

料理長:お嬢様、こんなこというのはなんじゃが、お嬢様がそこまで星野の事が好きなように思えなかったものじゃから…どこが好きになったんじゃ?

 

萌音:どこがって………全部?

 

料理長:なるほどなあ………そうか…全部かあ…

 

萌音:トム*爺《じい》は応援してくれないの?

 

料理長:い、いいや!もちろん応援するぞい!このジジイに任せておけ!

 

萌音:本当!?嬉しい!お父様達にもお手紙を書こうと思ってるの。今ちょうどお母様と領地に旅行中でしょう?意見を*頂戴《ちょうだい》しようと思って。お父様とお母様は恋愛結婚だそうだから

 

料理長:そうかい。いい返事が聞けるとええんだがな

 

萌音:でも星野ってば全然なのよ!それに意地悪がひどいの!悪いのは私だったけど……

 

料理長:星野にはワシがきちんと言っておくから心配せんでいい。お嬢様はそのままでいてくれ

 

萌音:そう?まぁお父様も「自然体の*萌音《もね》が一番可愛い」と言ってくださるものね。そうするわ

 

料理長:ほんと、そのままでいてくれ

 

 

0:(長廊下)

 

 

メイド:トムさんどうでしたぁ?

 

料理長:いやそれがな……*恋煩《こいわずら》いなのは間違いないんじゃが…

 

メイド:じゃが?

 

料理長:相手が、星野くんでな…

 

メイド:……………………は?

メイド:ちょっと、あの男殺してきますわ

 

料理長:待てい!早まるんじゃないぞ!

 

メイド:早まってなんかいませんよお嬢様が星野なんかクソ野郎に惚れるわけが無いでしょう。星野がなんかしたに決まってんですよ殺す!

 

料理長:*東《あずま》くん!*本性《ほんしょう》出とる!抑えるんじゃ!

 

メイド:星野ぉ!てめぇどこ行きやがった!

 

料理長:お嬢様の屋敷じゃぞ!血で染めされる訳にはいかん!

 

メイド:フゥー!フゥー………………それも、そうですね

 

料理長:分かってくれたか…

 

メイド:あのクソ野郎は夜道で殺すことにします

 

料理長:なんも分かっとらん!

料理長:ほらあの〜ワシら使用人はみんな寮住まいじゃから、無理だと思うぞ…?

 

メイド:……じゃあ、どうしたらいいんですかぁ〜!

 

料理長:まぁワシも、星野くんとお嬢様が…というのはなんとも言えんからな。

 

メイド:そう、ですねぇ…

 

メイド:じゃあ、お嬢様に関しては私に任せてくださぁい。トムさんは星野さんをお願いしまぁす♡

 

料理長:不安じゃ………

 

 

0:翌朝、萌音の部屋の前

 

 

星野:そろそろですね。お嬢様……おっといけない。これこれ

 

0:手に中華鍋とお玉を持つ

0:(お玉で中華鍋をぶっ叩きながら)

 

星野:お嬢様ー、朝でございますー。ニーハオニーハオアイアムトムヤムクーン。鉄鍋のように全身油コーティングされたくなければ起きてくださーい。え?コーティングするのは髪の毛だけでいいですってー?そんな馬鹿言わないで下さいよ。*菜種油《なたねあぶら》じゃないんだからもー

 

萌音:うるさいうるさいうるさい!!!何!?何なの!?

 

星野:あ、おはようございます。ニチアサタイムはとっくに過ぎましたよ

 

萌音:おはようございます、じゃないわよ!何!?何がしたいの!?今日は休みなんだからちょっと遅くたって

 

星野:(やや被せ気味)テスト、いかがでした?

 

萌音:えっ

萌音:えっ、、とぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

星野:先日あったと聞き及びましたが、私全く把握してないんですよねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?

 

萌音:テスト?し、知らなーい何それぇ〜…………

 

星野:(捨てたはずのテストを見せる)36点

星野:あれ?このテストって50点満点でしたっけ〜?

 

萌音:(すごく小さい声)……100点満点です

 

星野:……………………

星野:貴方って人は!!!今度同じような点数取ってみなさい擦り傷に砂ぶっかけてアロエ塗ったくってやりますからね!

 

萌音:ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!

 

星野:…で、一体何があったんですか

 

萌音:え?

 

星野:お嬢様は何もなしにこんな点数を取る人ではないことは、私がよく知っております

星野:悩みがあるなら相談に乗りますし、私に出来ることならばできる限りお力添えを

 

萌音:ほんと?

 

星野:ええ、執事に二言はありま……時々ありますけど*大抵《たいてい》は無いですよ

 

萌音:言いきりなさいよそこ

 

星野:まぁまぁいいじゃないですか。どうしたんですか?深夜に怖い話でも見てビビって睡眠不足とかですか?

 

萌音:ほ、星野は……休日何してるの?

 

星野:はて、私ですか?

 

萌音:そうよ!い、言っとくけど私が気になったとかじゃないから!友達…そう友達が男の人は休みの日何してるのか気になってるらしくてそれで……。あくまで調査の一環であって個人的に聞きたいとかそういうんじゃないからっ!

 

星野:なるほどご友人が…。

星野:そうですね…休日はエロゲ、いえギャルゲー………ゲー厶を少々。危ない危ない

 

萌音:全然隠しきれてないわよ。意外とインドア派なのね

 

星野:あとは最近医療の勉強をしております

 

萌音:へぇ、勤勉なのね

 

星野:ええ。もうすぐ読み終わるのでいいペースです

 

萌音:もしかしてもう何冊か医学書を読み切ってるの?

 

星野:いえ、ブラックジャック読んでます

 

萌音:おもっくそ漫画じゃない

 

星野:これで無免許でも何とかなります

 

萌音:ならない

 

星野:整形手術もなんのその

 

萌音:絶対にやめて

 

星野:とまぁこのように、とても執事らしいとは言えない休日を過ごさせていただいていますよ

 

萌音:恋人は?デートとかしないの?

 

星野:お嬢様…………私がいるようにお見えで?

 

萌音:恋人がいるならエロゲなんてしない

 

星野:エロゲなんて言葉使っちゃいけません!

 

萌音:ついさっきモロ言った人が何を

 

星野:正解ですけど

 

萌音:正解なんじゃない!

萌音:ふーん。星野居ないんだ、ふーん

 

星野:なんですか。

 

萌音:別に。居ないなんて珍しいと思っただけ

 

星野:っまさか!私の事をそっちの人だと思ってるんじゃないでしょうね!?

 

萌音:どこをどう捉えたらそうなるのよ!

 

星野:*巷《ちまた》の女性は皆そうだと伺かっております。確かなんだっけか……ふ、、ふ………

星野:あそう、*婦女子《ふじょし》

 

萌音:読みはあってるけどそれただの女性の*総称《そうしょう》!!

萌音:音声じゃ伝わんないボケやめてくれる!?漫画でもない限り分かんないわよ!

 

星野:えっここ漫画じゃなかったんですか

 

萌音:た い し て 普 通 の 世 界 よ !

 

 

0:一拍置く(咳払いなど)

 

 

星野:とまあ茶番はここまでにして、話を戻しましょう

星野:ココ最近ずっと上の空なのはどうしてですか?

星野:あ、待って。いい題名思いつきました。

星野:(すごいキメ顔)「俺のお嬢様が最近ずっと上の空な件」なのはどうしてですか?

 

萌音:カスみたいな議題やめてくれる?

萌音:別に、私も人並みに恋愛とかしてみたい〜って、だけ

 

星野:お嬢様が…………!?

 

萌音:世界滅びますって言われた時みたいな驚き方やめて

 

星野:しかしなるほど……*恋煩《こいわずら》いでしたか。いいですねえ。*年頃《としごろ》という感じがいたします

 

萌音:そこまで私たち歳離れてないでしょ…

 

星野:であれば、いつでもその素敵な殿方に出会えるように、こちらもしっかり努力しておかなければですね 

 

萌音:確かにそうだわ。今日の予定は?

 

星野:今日はお乗馬みたいなんとヴァイオリンのお稽古みたいなんがあります

 

萌音:確定事項で言いなさいよ。

 

萌音:まぁいいわ。とりあえず乗馬ね。何時から?

 

星野:9時からです

 

萌音:………さっきニチアサタイムはとっくに終わってるって言ってなかった?

 

星野:………………あ

 

0:


星野:お嬢様!今すぐ私のチャリンコの後ろに!爆速でチャリかっ飛ばしてお送り致しますので!!!

 

萌音:お、お願い!!

 

メイド:*萌音《もね》お嬢様ぁ〜♡……何してんすか

 

萌音:東?えっと乗馬に

 

メイド:ママチャリ2ケツで?

 

星野:だって9時からって………過ぎてて……

 

メイド:………星野さぁん♪とりあえずどさくさに紛れて抱いてるそのお嬢様の腰を離してもらえますか?それとも腕を切り落としましょうかぁ?

 

星野:痛いのは嫌です

 

メイド:はぁい。ありがとうございますぅ♪

メイド:怖あいことされませんでしたお嬢様ぁ?何かあったら*東《あずま》がぶちのめしてあげますからねぇ〜

 

星野:無実です

 

メイド:無実かどうかは私が決めますぅ

 

星野:横暴がすぎます

 

メイド:さぁ〜、あの馬鹿は放っておいてぇ、お嬢様ぁ♡奥様からお手紙が届いてますよぉ?

 

萌音:本当!?

萌音:星野はあっちいってて!乗馬も、今日はキャンセル!

 

星野:承知いたしました。

 

 

0:廊下

 

 

星野:……………あ、よく見たらこれ乗馬じゃなくて乗車か。私の道案内カンペでしたねこれ

 

 

0:萌音の部屋

 

 

メイド:お嬢様ぁ、お手紙にはなんと?

 

萌音:好きなひ……………と、友達と仲良くなるためにはどうしたらいいかって聞いたの。そしたらね

 

メイド:はぁい♪

 

萌音:……………夕日を背に*河川敷《かせんじき》で殴り合うのが1番なんですって!

 

メイド:え?

 

萌音:こんな方法があるなんて!さすがお母様!

 

メイド:ちょちょちょお嬢様、なんて言いました?

 

萌音:だから、夕日を背に殴り合うの!*何処《どこ》でもいいみたいだけど、*河川敷《かせんじき》だとなお良いんですって!

 

メイド:それはヤンキーが仲良くなる方法ですよお嬢様!!!

 

萌音:でも、お父様とお母様は実際にそうして仲を深めたと書いてあるわ

 

メイド:どんなご両親ですかぁ!

メイド:……………いや待てよ?星野さんがお嬢様を殴るなんてことする訳はないから………恋愛に発展するわけない。それにお嬢様に殴られる星野さんは普通に面白いから見たい

 

0:

 

メイド:素敵な考えですお嬢様ぁ♡早速今日やってみましょうよぉ

 

萌音:そうよね!こういうのは早い方が良いって聞くものね! 

 

メイド:はい!それじゃあお呼び出しのお手紙も書かなきゃですねぇ。*東《あずま》がお手伝いしますよぉ♡

 

萌音:お願い!

 

 

0:厨房

 

 

料理長:星野くん

 

星野:なんでしょう?

 

料理長:星野くんはその、好きな人とかおるんか?

 

星野:えっ、なななんですかいきなり

 

料理長:いやその、世間話の*一環《いっかん》じゃよ!この間お嬢様ともそんな話をしてな

 

星野:そういえばお嬢様も誰かに恋をしているとおっしゃられていました。一体*何処《どこ》の馬の骨のことを……

 

料理長:気になるのか?

  

星野:お嬢様の将来を左右する話ですからね。執事としては考えない方がおかしいかと

 

料理長:そうか

 

星野:それで料理長。私はどうか、でしたか?

星野:…………おりますよ

 

料理長:そうなのか!

 

星野:ですが…叶わないと分かっておりますので。私とでは色々な障害もあるでしょうしね

 

料理長:悲しくは無いのか?

 

星野:おそばにいられるだけで充分なのです。それ以上望むとバチが当たってしまいます

 

料理長:星野くん………

 

星野:さて!お嬢様の3時のお茶の準備をしなくては!申し訳ありませんが手伝っていただいても?

 

料理長:もちろんじゃよ

 

料理長:(小声)…………すまんな、星野くん



 

星野:あれ、どうしてこんな所に手紙が…………

 

0:

0:果たし状、星野殿

 

星野:…は、、はた、、、果たし状!?

 

星野:しかも私*宛《あ》て!?なんで!?

 

料理長:この字……お嬢様じゃないかのう?

 

星野:私、なにか*粗相《そそう》を!?

 

料理長:真面目に答えるならいつもしとる

 

星野:そんな!ちょっとしたお茶目じゃないですか!

 

料理長:自分がされたら?

 

星野:殺意湧きますね

 

料理長:そういうとこじゃよ

 

星野:負けたらクビ、ですかね…

 

星野:勝ってもお嬢様に手を上げたとして解雇、負けても解雇、終わりですね私

 

料理長:まだ解雇と決まった訳ではなかろう!?何かほら、考えがあるのかもしれんし!

 

星野:*絞首台《こうしゅだい》に登ってきます…

 

料理長:諦めるんじゃない!

 

星野:*介錯《かいしゃく》は任せました…

 

料理長:もうダメじゃ聞いとらん……

 

 

0:河川敷

 

 

萌音:き、来てくれたのね

 

星野:はい……

 

萌音:ちょっとどうしたの?酷い顔色してるわよ?

 

星野:いえ、、大丈夫です……

 

萌音:大丈夫な訳ないじゃない!!誰かに何かされたり言われたりでもした?誰なのか言いなさい!

 

星野:……………

星野:お願いですから星野を見限らないでください!!

 

萌音:……………え?

 

星野:謝ります!中華鍋ぶっ叩いた事もセンブリ茶入れたことも賞味期限1日過ぎたパンを内緒で食べさせたことも食べ方カスだなと思ったことも謝りますから!!

 

萌音:ん最後!サラッとディスるのやめてもらっていい!?知らないの何個か出てきたけど!?

 

萌音:別に、それに怒って呼び出した訳じゃないわ

 

星野:んえ?果たし状と書いておりましたから私、てっきりお嬢様に身体的にも精神的にもボコボコにされた*挙句《あげく》解雇通知叩きつけられてポイされると思ってました

 

萌音:ああ。*東《あずま》が教えてくれたのよ。大切な話がある時はそういう書き方にした方がいいって

 

星野:あの変態メイドお嬢様に何教えてんだ

星野:では…どうして*河川敷《かせんじき》に?

 

萌音:それは…星野ともっと仲良くなるためよ

萌音:だから星野!私と殴りあって!!

 

星野:かしこまりました…かしこまりました!?

星野:お、お嬢様。殴り合うというのは、なにかの隠語だったり…

 

萌音:え?そんな訳ないじゃない。言葉通りの意味よ


星野:もっと*宜《よろ》しくないですよ!!まさかそれも変態メイドの入れ知恵ですか!

 

萌音:いえ、お母様が

 

星野:……そういえばここ奥様筆頭の格闘一家でした…

星野:(咳払い)いいですかお嬢様。私はヘロヘロのもやしのポンコツですから、お嬢様のパンチ1つでぶっ飛んで行くくらいには*脆弱《ぜいじゃく》です。殴り合いなんてとてもとても……

 

萌音:え……

 

萌音:星野は…私と殴り合うの、嫌…?

 

星野:お嬢様と、というよりそもそも殴り合うのが嫌です。私弱いですし

 

萌音:なによ、それ…………

 

萌音:私が嫌いなら、最初からそういえば……(涙ぐむ)

 

星野:待っっっっってくださいお嬢様!?決してそういうんじゃなくて痛いのが嫌なだけなんですお嬢様のこと嫌いという訳ではなくてあのその

 

萌音:私は星野のことが大好きなのに!!

 

星野:……………………はい?

 

萌音:趣味を聞いても恋人のことを聞いてもなんでもない顔で言ってきて、私がどれだけ見たって同じように返してくれないじゃない。

萌音:だから私、ムキになって星野に意地悪しようとしたら、逆に意地悪されるし………

萌音:星野のばか!!!

 

星野:お嬢様………

 

萌音:悪いと思うなら付き合ってよ!

 

星野:…………申し訳ありません!!!!!

 

メイド:はああああああああ!!?!?!?!てんめぇお嬢様の告白だぞ断ったら殺す!断らなくても殺す!!

 

星野:うわああ!!!*東《あずま》さんどこから見てるんですか!あと、私に死ぬ以外の選択肢ないじゃないですか!?

 

メイド:死ぬか殺されるか今すぐ選べ!!

 

星野:最悪の二択!!!

 

萌音:待って!!なんで、ダメなの……?

 

星野:お嬢様、これは私のとっておきの秘密なのですが…

星野:私、恋愛対象が女性じゃないんです

 

萌音:……え?

 

星野:私男性の方が好きなんです。年の差があって、ガチムチならなお良しです

 

萌音:……………………は?


星野:ですからその、お嬢様にはすみませんが…

 

萌音:それってつまり……ゲイって

 

星野:(食い気味)はいゲイってことです

星野:ていうか私の採用基準そこです。私が男の身でありながらお嬢様のそばに仕えられているのは、そういうことが理由なのですよ

 

萌音:でも、星野この間「私の事をそっちの人だと思ってるんじゃないでしょうね!?」って言ってたじゃない!?

 

星野:別に否定も肯定もしてませんし

 

萌音:それは……いやいや!それで星野本当に良かったの!?

 

星野:たいっへん恐縮ですが………ココ現ナマの羽振りが良いんですよ



星野:目の保養もありますし、私にとってはさして問題ではなかったというか



萌音:あ、あ、あぁ……………

 

メイド:お嬢様が倒れた!?

 

星野:なっ!お気を確かに!!

 

メイド:死なないでくださいお嬢様ぁー!*東《あずま》がいますよ!!*東《あずま》は萌音お嬢様のこと大大大好きですよ!性欲を抱いてる方の好きですよ!!!!

 

星野:そういうのは口にしない!*精神衛生上《せいしんえいせいじょう》良くないでしょうがっ!

 

メイド:*東《あずま》がずっとおそばにいるからいいじゃありませんかぁ〜!

メイド:まぁ確かに、昔お嬢様に*無体《むたい》を働こうとして外されましたけど

 

星野:前科持ちだった!!!!犯罪者予備軍とかじゃない!もう犯してたこの人!!

料理長:星野くん!死んではおらんか!

 

メイド:トムさん!遅いですよぉ!

 

料理長:いやすまん、夕食の仕込みがあっての……

 

萌音:トム爺、年の差、ガチ、ムチ…?

 

料理長:ん?まぁ歳とは不相応に筋肉は付いておるがの。どうしたんじゃ?

 

萌音:……トム爺の馬鹿!

 

料理長:なぜワシが!?

 

萌音:トム爺相手なんて勝てっこないじゃない…っ!かっこよくて料理もできておまけに筋肉まであるなんて!!

 

料理長:なんかわからんが…ワシ褒められてる…?

 

星野:すみません。私がお嬢様に秘密をバラしてしまったがばかりに…………半年ROMります

 

料理長:こもるなこもるな

 

メイド:お嬢様ぁ!*東《あずま》に!*東《あずま》にしときましょ!?お嬢様のこと世界で1番に大好きですよ!何でもしますよ!?靴だってピカピカになるまで舐めまわしますよ!?むしろそれがご褒美!!

 

萌音:……………きたないからやだあ…

 

メイド:星野のせいで汚いって言われたんですけどぉ!?どう落とし前つけるんじゃゴラァ!!!

 

星野:私!?矛先私ぃ!?

 

萌音:わたしトム爺をめざす。ガチムチになるもん……

 

星野:あ、ガチムチになったとて性別の観点でダメですよ

 

萌音:…うわあああああああん!!!!

 

メイド:歯ァ食いしばれやてめぇ!!!!

 

星野:だからなぜ*東《あずま》さんが!!

 

料理長:星野くん、ワシでもそれ言われると凹む……

 

星野:エッ………なんか、ごめんなさい……………

 

メイド:ふんっ!!!!(殴る音)

 

星野:あっ…………星見えた………さようなら私、また来世………

 

 

 



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