｢お坊ちゃまの想い人はエセメイド｣
【読み方】 ｢おぼっちゃまのおもいびとはえせめいど｣
出演人数：4人(男2女2)
時間：20分(推定)
配役
◆星野：お坊ちゃまをからかって遊ぶのが日課のメイド。メイドとしてのスキルは一流とエセの間くらい
◆司：星野のことが好きな絶賛思春期お坊ちゃま。星野のことを困らせようと頑張るが軽くあしらわれる
◆東：執事。司のことが好きな変態。坊っちゃまの靴で踏まれたい
◆エマ：全てを包み込む安寧のお婆ちゃん。よく司が泣き事を言いにくる。(※エマ姉ちゃんに変更可)
0：(以下、本文)
司：おい、茶が冷めたから淹れ直せ
星野：2時間も放置するからでございますよ。全く、せっかくお淹れしましたのに
司：気分じゃなかったんだ。安物なんだからいいだろ？
星野：いいえ。本日の紅茶は特別なものなんですよ！
司：何？そうなのか？
星野：なんと、茶葉を使ってございませ〜ん！
司：……つまりどういうことだ？
星野：これ、午後ティーをチンしたものにございます！
司：手抜きじゃねえか！！！
星野：だってここ数日私がどんなお茶を淹れようが手付かずだったではありませんか。あまりの手のつけなさに昨日はセンブリ茶を淹れていましたよ
司：それ俺が飲んでたらどうしてたんだよ……
星野：*勿論《もちろん》横で手ェ叩きながら大爆笑ですよ(笑)
司：人の不幸を笑いやがって！クビにするぞお前なんか！！！
星野：え〜？私より優秀なメイドがいるんですか〜？
司：世界三大美女、言ってみろ
星野：何を分かりきったことを。三大もいません。オンリー私です。そうまさに*perfect《パーフェクト》 *woman《ウーマン》こと私！
司：んなわけないだろ！！世界三大美女ってのはな！もっと昔の人間に付けられてんだよ！
星野：お坊ちゃまは私がブサイクって言いたいんですか…？
司：いや別にそういうわけじゃ…
星野：えーん酷いですよお坊ちゃま〜！嘘ついたら口の中にハリセンボン入れられちゃうんですからね！
司：針千本だろそこは！
司：あーもう下がれ！お前と話してると疲れてしょうがない！！
星野：はーい。あ、おやつにはレモンティーチンして差し上げますからねー。それとも*紅茶花伝《こうちゃかでん》にしときます？
司：茶葉から淹れろ！！
0：＊ ＊ ＊
星野：それにしても…最近のお坊ちゃま、気づけばぼーっとしてますね。これで成績が下がろうものなら、お給料減額待ったなし！それだけは何としても避けたいのですが………
星野：そもそもどうして上の空なんでしょう？
東：そんなの決まってます*恋煩《こいわずら》いです！
星野：*東《あずま》さん。冗談言ってる暇があったら仕事をしてください
東：いーえ！これは執事の勘です。切なげに伏せるまぶた、小さくすぼんだ口から出るため息、なんの理由もないのに見る窓の外の景色、ぜーんぶ恋してる男のする行動そのものです。同じ性別だから分かるんですあー！司坊っちゃま好きぃ…♡
星野：きっしょ
東：星野さんに言われたくないです。でも坊っちゃまのことそのままにしてたら成績下がるのは間違い無さそうですけどね
星野：な、なんですって！
東：だって昨日帰ってきた小テスト、悲惨な結果でしたよ？ま、まぁ男の子はちょっと馬鹿っぽい方が可愛らしい……
星野：(途中で遮る)こ、これはなんという…！お坊ちゃま、私に見せず隠しましたね！なんとあくどい！もう先生知りません！
東：いつから坊っちゃまの先生になってるんですか。変わりやがれください
星野：ちょっとしたジョークじゃないですか急にガチトーンにならないでくれます？普通にきしょいですよ
東：ならいいんですよ！坊っちゃまがデレデレに甘える存在なんて*東《あずま》だけでいいですからねぇ。そのまま*東《あずま》にだけ甘えてくれて、*東《あずま》のことその小さな*御御足《おみあし》で踏んづけてくれるだけでいいんです………
星野：なんでこの人解雇されないんだろ……もうアウトでしょこれ
東：ともかく、司坊っちゃまの*恋煩《こいわずら》いを何とかしないと僕まで解雇されちゃいますよ。ただでさえ目付けられてんのに
星野：ばっちり犯罪予備軍入りしてるじゃないですか。本当に*恋煩《こいわずら》いなんでしょうね？
東：絶対そうですよ。ほら早くちゃちゃっと解決してきてください。あ、もしかして？エセメイドの方でしたっけ？私みたいな優秀な執事じゃないですもんねぇ！！
星野：へえ？お坊っちゃま付きメイドより優秀なんですね？
星野：早く窓拭きに戻りなさい窓際執事が
東：ｴﾝ………
0：(司の部屋)
司：………あぁ〜〜！！！
エマ：司ちゃん。男の子がそんなに叫んだら駄目よ？
司：またやっちゃった！！もうどうしたら星野俺の事意識してくれんの！！
エマ：おほほ。可愛らしい悩みだこと。
司：………エマ婆ちゃん！見てるだけじゃなくてなんかアイデアくれよ！
エマ：自分で考えないとねぇ。
司：だってさあ！俺が何言っても星野はぐらかしてからかって遊んで……ちょっとは意識しろバカ！！
エマ：おませさんだねぇ
司：なんかないの！？これ渡しとけば間違いない！みたいなの
エマ：女の子にも好みがあるからねぇ
エマ：何かあげたことがあるの？
司：……し
エマ：ん？なんて言った？
司：……虫あげた。ちっちゃい頃だけど………
エマ：絶対ダメなチョイスだねぇ
司：……あの時の顔がもう忘れられない！*蛆虫《うじむし》見てるような目でこっち見てきたんだよあの時のこと*払拭《ふっしょく》したいんだよぉぉぉぉぉ
エマ：ふむ………
エマ：まずはいつも何してるかを聞くのがいいんじゃない？プレゼントを贈るにしても好みが分からんと話にならないよ
司：婆ちゃんは知ってる？
エマ：知ってるとしても言わないわよ
司：なんで！？
エマ：他人から聞いたんじゃかっこ悪いんじゃないのかい？自分から聞きに行かないと
司：……なら、ちょっとくらい頑張ってみてもいいよ……。父上と母上にも相談してみる。2人は恋愛結婚だったらしいから、父上に聞けば何か分かるかもしれない
エマ：そうかい。いい返事が聞けるといいねぇ
司：てか、星野ってば意地悪がひどいんだぜ！そりゃあさ、根本的に悪いのは俺かもけど……
エマ：星野ちゃんもきっと怒ってないよ。大丈夫、安心しときなさい
司：そうか？まぁ星野も｢自然体の坊っちゃまが一番楽｣って言ってくれるもんな！そうする！
エマ：うん、、、、そのままでええよあんたは
0：(長廊下)
東：エマ様。坊っちゃまのご様子は？
エマ：色々とお勉強してるわ。恋する男の子はいつ見ても可愛いわねぇ
東：恋！？坊っちゃまはどなたかに恋しておられるんですか！？誰ですか僕ですか！？
エマ：え？星野ちゃんよ。小さな頃からずっとそうよ？
東：……………………は？
東：ちょっと、あの女殺してきますわ
エマ：まぁ物騒。あんまり早まらないの
東：早まってなんかいませんよ坊っちゃまが星野なんか*女狐《めぎつね》に惚れるわけが無いでしょう。星野がなんかしたに決まってんですよ殺す！
エマ：1ミリも聞いてないわね
東：星野ぉ！あんにゃろどこ行きやがった！
エマ：司ちゃんの屋敷よ？血で染めさせるわけには行かないでしょう？
東：ﾌｩｰ!ﾌｩｰ………………それも、そうですね
エマ：分かってくれて良かったわ
東：あの*女狐《めぎつね》は夜道で殺すことにします
エマ：あら何にも分かってない
エマ：ほら、使用人はみんな寮住まいだから、無理だと思うわよ…？
東：……じゃあ、どうしたらいいんですかぁ〜！
エマ：まぁ私も、星野ちゃんが司ちゃんのことどう思ってるのかは、なんとも分からないのよねぇ
東：そう、ですねぇ…
東：じゃあ、坊っちゃまに関してはこの*東《あずま》に任せてください！エマさんはあの*女狐《めぎつね》をお願いします！
エマ：語彙が戻ってなくて不安だわ………
0：翌朝、司の部屋の前
星野：そろそろかな。お坊ちゃま……おっといけない。これこれ
0：手に中華鍋とお玉を持つ
0：(お玉で中華鍋をぶっ叩きながら)
星野：お坊ちゃまー、起きてください朝ですよー。今日は鉄鍋バージョンですよー？フライパンでは出せないこのうるっさい音！本日は休日のオカン風で失礼しますねー！はいアンタいつまで寝てんのはよ起きなさいいい加減ええ大人なんやからお母さんもう起こさんよ分かってんのー！？
司：うるっさ！！！何！？何してんの！？
星野：あ、おはようございます。ニチアサタイムはとっくに過ぎましたよ
司：おはようございます、じゃない！何！？何がしたいの！？今日は休みなんだからちょっと遅くたって
星野：(やや被せ気味)テスト、いかがでした？
司：えっ
司：えっ、、とぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
星野：先日あったと聞き及びましたが、私全く把握してないんですよねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜？
司：テスト？な、何それぇ〜…………
星野：(捨てたはずのテストを見せる)36点
星野：あれ？このテストって50点満点でしたっけ〜？
司：(すごく小さい声)……100点満点です
星野：……………………
星野：お坊っちゃまって人は！！！今度同じような点数取ったら擦り傷に砂ぶっかけてアロエ塗ったくってやりますからね！
司：すいませんすいませんすいません！！！
星野：…で、一体何があったんですか
司：え？
星野：お坊っちゃまは何もなしにこんな点数を取る人ではないことは、私がよく知っております
星野：悩みがあるなら相談に乗りますし、出来ることがあるならできる限りお力添えを
司：ほんとか？
星野：ええ、メイドに二言はありま……時々ありますけど*大抵《たいてい》は無いですよ
司：そこは言いきれせめて
星野：まぁまぁいいじゃないですか。どうしたんですか？深夜に怖い話でも見てビビちゃって睡眠不足とかですか？
司：ほ、星野は……休日何してるんだ？
星野：私ですか？
司：そう！い、言っとくが俺が気になったとかじゃないからな！友達…そう友達が女好みをリサーチするために休みの日何してるのか気になってるらしくてそれで……。あくまで調査の一環であって個人的に聞きたいとかそういうんじゃないからな！！
星野：なるほどご友人が…。
星野：そうですね…休日は陰キャらしくピクシブで同人誌を漁っ……………漫画をよく読んでますよ！危ない危ない
司：全然隠しきれてないぞ。意外とインドア派なんだな
星野：あとは最近医療の勉強をしております
司：へぇ、勤勉だな
星野：ええ。もうすぐ読み終わるのでいいペースです
司：もしかしてもう何冊か医学書を読み切ってるのか？
星野：いえ、ブラックジャック読んでます
司：おもっくそ漫画じゃん
星野：これで無免許でも何とかなります
司：ならねぇよ
星野：あ、整形手術とかしちゃいましょうか？
司：絶対にやめろ
星野：と、まぁこんな感じで、とてもメイドらしいとは言えない休日を過ごさせていただいていますよ
司：恋人は？いないのか？
星野：お坊ちゃま…………私がいるようにお見えで？
司：まぁ恋人がいるなら陰キャみたいな休日なんて過ごさないな
星野：陰キャなんて言葉使わないでください！！
司：ついさっきモロ言った人が何を
星野：正解ですけど
司：正解なんじゃねえか！
司：ふーん。星野居ないのか、ふーん
星野：なんですか。
司：別に。居ないなんて珍しいと思っただけだ
星野：っまさか！私の事いつか孤独死しそうだなーとか思ってるんじゃないでしょうね！？
司：どこをどう捉えたらそうなる！？
星野：最近の若者は皆総じてそうなる運命だって囁かられてます！
星野：あれ？でも私より若いお坊ちゃまはもっと…………っぷ。
司：俺にしか伝わんねぇ顔やめろ！！腹立つんだよ！カメラがあったら見せてやりてぇわ！
星野：えっ今ドラマの撮影中じゃないんですか。せっかくお化粧してバッチリ決めたのに
司：リアルでガチな世界だよ！！！！
0：一拍置く(咳払いなど)
星野：とまあ茶番はここまでにして、話を戻しましょう
星野：ココ最近ずっと上の空なのはどうしてですか？
星野：あ、待って。いい題名思いつきました。
星野：(すごいキメ顔)｢お坊ちゃまが最近ずっと上の空で困ってます！私、これからどうなっちゃうの〜！？」な状況なのはどうしてですか？
司：カスみたいな議題付けるのやめろ？
司：別に、俺ももう少し踏み出して頑張らないとな〜って、それだけだよ
星野：お坊ちゃまが…………！？
司：2分後に世界滅びますって言われた時みたいな驚き方するな？
星野：しかしなるほど……成長期ですね！いいですねえ。*年頃《としごろ》という感じがいたします
司：成長期ってなんだよ！そこまで歳離れてないだろ！
星野：であれば、素敵な方に振り向いていただけるように、こちらもしっかり努力しておかなければですね
司：ま、まぁ確かにそうだな……今日の予定は？
星野：今日はお乗馬みたいなんとヴァイオリンのお稽古みたいなんがあります
司：せめて確定事項で言え？
司：まぁいいや。とりあえず乗馬な。何時から？
星野：9時からです
司：………さっきニチアサタイムはとっくに終わってるって言ってなかった？
星野：………………あ
0：
星野：お坊ちゃま！今すぐ私のチャリンコの後ろに！爆速でチャリかっ飛ばしてお送り致しますので！！！ほら靴はいて！！
司：頼む！！
東：司坊っちゃまぁ〜♡……何してんすか
司：東？えっと乗馬に
東：ママチャリ2ケツで？
星野：だって９時からって………過ぎてて……
東：………星野さん♪とりあえずどさくさに紛れて触っている坊っちゃまの*御御足《おみあし》を離してもらえますか羨ましい。それともその腕を切り落としましょうか？
星野：痛いのは嫌です。あと本音ダダ漏れですよ
東：はい。ありがとうございます
東：怖いことされませんでした坊っちゃま？何かあったら*東《あずま》がぶちのめしますからね〜？
星野：無実です
東：無実かどうかは私が決めます。問答無用で有罪です
星野：横暴がすぎます
東：さ、あの馬鹿は放っておいて坊っちゃま。旦那様からお手紙が届いてますよ？
司：本当か！？
司：星野はあっちいってろ！乗馬も、今日はキャンセルだ！
星野：承知いたしました。
0：司の部屋
東：坊っちゃま、お手紙にはなんと？
司：好きなひ……………と、友達と仲良くなるためにはどうしたらいいかって聞いたんだ。そしたら
東：はい♪そしたら？
司：……………夕日を背に*河川敷《かせんじき》で殴り合うのが1番なんだって！
東：え？
司：こんな方法があるなんて！さすが父上！
東：ちょちょちょ坊っちゃま、なんて言いました？
司：だから、夕日を背に殴り合うんだよ！*何処《どこ》でもいいみたいだけど、*河川敷《かせんじき》だとなお良いらしい！！
東：それはヤンキーが仲良くなる方法ですよ！！！
司：でも、父上と母上は実際にそうして仲を深めたらしいぞ？
東：どんなご両親ですか！
東：……………いや待てよ？星野さんが坊っちゃまを殴るなんてことする訳はないから………恋愛に発展するわけない。それに坊っちゃまに殴られる星野さんは普通に面白いから見たい
0：
東：素敵な考えです坊っちゃま！！早速今日やってみましょう！！善は急げですよ！
司：そうだな！こういうのは早い方がいいって言うもんな！
東：はい！鉄は熱いうちに打て、です！それじゃあ呼び出しの手紙も書かなきゃですね。*東《あずま》がお手伝いしますよ
司：頼む！
0：厨房
エマ：星野ちゃん
星野：なんでしょう？
エマ：星野ちゃんはその、好きな人とかいるの？
星野：えっ、なななんですかいきなり
エマ：世間話の*一環《いっかん》よ〜。この間司ちゃんともそんな話をしてね？
星野：そういえばお坊ちゃまも誰かに振り向いて欲しいとおっしゃられていました。一体*何処《どこ》の馬の骨のことを……
エマ：気になるの？
星野：お坊ちゃまの将来を左右する話ですからね。お坊ちゃま付きのメイドとしては考えない方がおかしいかと
エマ：そうねぇ〜
星野：それで私はどうか、でしたか？
星野：…………おりますよ
エマ：あら！そうなの？
星野：ですが…叶わないと分かっておりますので。私とでは色々な障害もあるでしょうしね
エマ：そうなの…？寂しくは無い？
星野：おそばにいられるだけで充分なのです。それ以上望むとバチが当たってしまいます
エマ：まぁ………
星野：さて！早くお坊ちゃまの3時のお茶の準備をしなくては！申し訳ありませんが手伝っていただいてもいいですか？
エマ：もちろんよ
エマ：(小声)…………司ちゃん、ごめんねぇ………
星野：？あれ、どうしてこんな所に手紙が…………
0：
0：果たし状、星野殿
星野：…は、、はた、、、果たし状！？
星野：しかも私*宛《あ》て！？なんで！？
エマ：あらこの字……司ちゃんじゃない？
星野：私、なにか*粗相《そそう》を！？
エマ：結構平常運転で粗相してるわよ
星野：そんな！ちょっとしたお茶目じゃないですか！
エマ：でも自分がされたら？
星野：殺意湧きますね
エマ：そういうところよ〜
星野：負けたら、クビ……？
星野：勝ってもお坊ちゃまに手を上げたとして解雇、負けても解雇……終わりですね私、はは……
エマ：まだ解雇と決まった訳では無いでしょう？司ちゃんがそんなことするとは思えないわ？何かほら、考えがあるのかもしれないわよ？
星野：*絞首台《こうしゅだい》に登ってきます…
エマ：聞いてちょうだい
星野：*介錯《かいしゃく》は任せました…
エマ：重症ね……
0：河川敷
司：き、来てくれたんだな
星野：はい……
司：どうしたんだよ。いつものお前らしくない
星野：いえ、、大丈夫です……
司：大丈夫な訳ないだろ！！誰かに何かされたり言われたりでもしたか？誰なのか言え！
星野：……………
星野：お願いですから星野を見限らないでください！！
司：……………え？
星野：謝ります！中華鍋ぶっ叩いた事もセンブリ茶入れたことも賞味期限1日過ぎたパンを内緒で食べさせたことも食べ方カスだなと思ったことも謝りますから！！
司：おい最後！サラッとディスるのやめてもらっていいか！？知らないの何個か出てきたけど！？
司：別に、それに怒って呼び出した訳じゃない
星野：んえ？果たし状と書いておりましたから私、てっきりお坊っちゃまに身体的にも精神的にもボコボコにされた*挙句《あげく》解雇通知叩きつけられてポイされると思ってました
司：そこまでする気もないぞ……。*東《あずま》が教えてくれたんだ。大切な話がある時はそういう書き方にした方がいいって
星野：あの変態執事お坊っちゃまに何教えてんだ
星野：では…どうして*河川敷《かせんじき》に？
司：それは…星野ともっと仲良くなるためだ
司：だから星野！俺と殴りあってくれ！
星野：なるほどかしこまり…かしこまりました！？
星野：お坊っちゃま〜？殴り合うというのは、なにかの隠語だったり…
司：え？言葉通りの意味だけど
星野：もっと*宜《よろ》しくないですよ！！まさかそれも変態執事の入れ知恵ですか！
司：いや、これは父上が
星野：……そういえばここ旦那様筆頭の格闘一家でした…
星野：(咳払い)いいですかお坊っちゃま。私はヘロヘロのもやしのポンコツですから、お坊っちゃまのパンチ1つでぶっ飛んで行くくらいには*脆弱《ぜいじゃく》なんです。殴り合いなんてとてもとても……
司：星野は…俺と殴り合うの、嫌か…？
星野：お坊っちゃまと、というよりそもそも殴り合うのが嫌です。私弱いですし
司：なんだよ、それ…………
司：俺の事が嫌いなら、最初からそういえば……(涙ぐむ)
星野：待っっっっってくださいお坊っちゃま！？決してそういうんじゃなくて痛いのが嫌なだけなんですお坊っちゃまのこと嫌いという訳ではなくてあのその
司：俺は星野のことが好きなのに！！
星野：……………………はい？
司：趣味を聞いても恋人のことを聞いてもなんでもない顔で言ってきて、俺がどれだけ見たって何したって同じように返してくれないじゃん！
司：だから俺、ムキになって星野に意地悪しようとしたら、逆に意地悪されるし………
司：星野のばか！！！あっち行け！！！
星野：お坊っちゃま………
司：悪いと思うなら付き合え！！！
星野：あそれは申し訳ありません
東：はああああああああ！！？！？！？！てんめぇ坊っちゃまの告白だぞ断ったら殺す！断らなくても殺す！！
星野：うわああ！！！*東《あずま》さんどこから見てるんですか！あと、私に死ぬ以外の選択肢ないじゃないですか！？
東：殺されるか*惨《むご》たらしく殺されるか今すぐ選べ！！
星野：もはや一択！！！
司：待て！！なんで、ダメなんだ……？
星野：お坊っちゃま。これは私のとっておきの秘密で他言無用なのですが……
星野：私、2次元にしか興奮しないんですよ
司：……え？
星野：ですから、私2次元にしか興奮
司：いや聞こえてる。…………は？
星野：なのでその、お坊っちゃまにはすみませんが…
司：それってつまり……オタ
星野：(食い気味)はいオタクってことですしかもだいぶキモめの
星野：ていうか私の採用基準そこです。私が異性でありながらお坊っちゃまのそばに仕えられているのは、そういうことが理由なのですよ
司：いやでも、この間ドラマがどうとか何とか言ってたじゃないか！
星野：あれはパンピーを装うためのフェイクです
司：はぁ……？お前なんでそこまでしてうちのメイド続けるんだ…？
星野：たいっへん恐縮ですが………ココ現ナマの羽振りが良いんですよ
星野：休日の漫画やピクシブ漁りで満たされますし？私にとってはさして問題ではなかったというか
司：あ、あ、あぁ……………
東：坊っちゃまが倒れた！？
星野：なっ！お気を確かに！！
東：死なないでください坊っちゃまぁー！*東《あずま》がいますよ！！*東《あずま》は司坊っちゃまのこと大大大好きですよ！ちょっと踏んだり縛って欲しいなって思う時ありますけどめちゃめちゃ好きですよ！！！！
星野：*精神衛生上《せいしんえいせいじょう》絶対に言っちゃいけない単語のオンパレード羅列しないで貰えます！？
東：*東《あずま》がずっとおそばにいるからいいじゃありませんかぁ！
東：まぁ確かに、昔坊っちゃまに*無体《むたい》を働こうとして首が飛びそうでしたけどね、物理的に
星野：前科持ちだった！！！！犯罪者予備軍とかじゃない！もう犯してたこの人！！
星野：だから窓際執事だったんだ……よく屋敷に居られてるなこの人
エマ：司ちゃん振られちゃった？
星野：エマさんいい所に！この変態を一刻も早くお坊っちゃまから引き剥がさないと！
エマ：あら。以前あれだけシメたのにまた？
東：ひっ！？エ、エマ様これはなんと言いますか……
司：東…？なんでそんな震えて……
エマ：こう見えて前は使用人達を取りまとめてたのよ？東くんとは昔から、“楽しく”させてもらってるわ？
東：ﾜｯｯ………ｱｯｯ…………(声にならない悲鳴)
司：……婆ちゃん怖い
エマ：まぁ、こんなに親しみやすいのに？
星野：エマ様すみません。私がお坊っちゃまを振ってしまったばかりに…………半年ROMります
エマ：こもらないの
東：坊っちゃまぁ！*東《あずま》に！*東《あずま》にしときましょ！？坊っちゃまのこと世界で1番に大好きですよ！何でもしますよ！？靴だってピカピカになるまで舐めまわしますよ！？むしろそれがご褒美！！出来れば踏んづけてぇ！！！！
司：……………きもいからやだ…
東：星野のせいでキモイって言われたんですけどぉ！？どう落とし前つけるんじゃゴラァ！！！
星野：私！？矛先私ぃ！？どう考えたって自分のせいでしょ！
エマ：東くん……？分かってるわよね…？
東：イエスマム
司：………こわ
星野：お坊っちゃまも2次元の世界にどうです？あっちの女の子はおならしませんよ？
司：そういう問題じゃないだろ………
エマ：星野ちゃん？何か言った？
星野：イエナニモ
エマ：うふふ〜
司：あぁ……もう頭痛い………。いっそドラマであってくれ…………………
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