第四話 魔界図書館にて【2:2:0】

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【あらすじ】

仕事をサボりたい魔王様にズメイが出した課題とは!?

 

出演人数:4人(男2女2)

 

時間:(推定)20分

 

配役

◆魔王    :【男】ちょっと押しに弱い魔王様。

◆カトリーヌ :【女】魔王の秘書、有能、魔王をいじるのが日課

◆ズメイ   :【男】魔王の剣術の師匠 竜人(たつびと)という種族 酒好き

◆エレン   :【女】魔界図書館司書 ズメイの妹 ビビり

 

 

***

 

ズメイ:坊、追加だ

 

魔王:はぁ〜。ズメイ!我はもうやめろと言っているのだぞ!これ以上仕事を増やすな!カトリーヌも何とか言え!

 

カトリーヌ:私はズメイ様に何かを言える立場にございません

 

魔王:我が許可する!我からズメイを引き剥がせ!

 

カトリーヌ:嫌でーす

 

ズメイ:坊、臣下に対してその態度はいささかよくないと思うぞ

 

魔王:ズメイが原因であろうが!何を我を侮蔑(ぶべつ)するような目でこちらを見る!?バレてないとか思ってそうだがカトリーヌ!お前もだぞ!しれっと我を軽く扱うな!

 

ズメイ:仕方がないな。では坊こうしよう。今から俺の出す課題をこなすことが出来たなら、仕事を少し減らしてやろう

 

魔王:・・・その課題は本当に我ができるものか?ズメイに酒の席で勝てとかいう無理難題では無いだろうな

 

ズメイ:そんなことはしない、いたって簡単だ。本当に、子供でもできるであろう些細なお願いみたいなものだ

 

魔王:ならやってやろうではないか。絶対にこの仕事量を減らしてみせるぞ!

 

カトリーヌ:魔王様、本来仕事は魔王様がされるべきなのですよ

 

魔王:・・・うるさい!

 

ズメイ:課題は簡単だ。今から300年前の魔界学校の卒業文集を持ってくること、だ

 

魔王:卒業文集?なんだ簡単ではないか。そんなの直ぐに終わってしまうぞ?いいのかズメイ?

 

ズメイ:ああそれでいい。だがひとつだけ条件だ坊。お前が魔王だということを悟られてはならない

 

魔王:我が、我だと悟られてはいけない?

 

カトリーヌ:確かに魔王様が『ご命令』すれば臣下は背けませんものね。課題が簡単になってしまいます

 

ズメイ:そういうことだ。分かったな坊?

 

魔王:分かった。必ず持ち帰ってきてやるぞ!

 

 

_______

 

カトリーヌ:で、アテはあるのですか魔王様?

 

魔王:ああ!たしか歴代の卒業文集は魔界図書館に寄贈されているはずだ!

 

カトリーヌ:なるほど、魔界図書館ですか。たしかあそこには私の友人がいるはずです

 

魔王:なんだと!それは好都合ではないか!早速お前からその友人とやらに融通を聞かせて持ってきてもらえ!

 

カトリーヌ:魔王様、それは『ご命令』ですか?

 

魔王:あっ

 

カトリーヌ:はぁー。良いですか。私が今こうして魔王様とともに行動しているのも、魔王様は必ず何かしでかすと思ったからなのですよ。分かっておりますか?

 

魔王:う、うむ・・・そ、うだな・・・

 

カトリーヌ:まずは変装からです。はいマント取ってください。その、無駄につけてる装飾品まで全部取る!

 

魔王:我のおしゃれが!

 

カトリーヌ:『我』も禁止です!一人称は『僕』に統一する!平身低頭(へいしんていとう)で物腰(ものごし)柔らかに話すこと!いいですか!?

 

魔王:う、うむ!

 

カトリーヌ:うむではありません!

 

魔王:はい!

 

ズメイ:これは・・・っ、実に見物だな・・・、ふっ、ははっ!

 

カトリーヌ:なるべく質素にして・・・、帽子と眼鏡を・・・。よし、少しはマシになりましたかね

 

魔王:・・・ダサいぞ

 

カトリーヌ:文句言わないでください

 

魔王:うむ・・・

 

カトリーヌ:うむ?

 

魔王:うっ・・・、はい!

 

カトリーヌ:よろしい。ではどうぞ図書館にお入りください

 

ズメイ:では俺は坊の部屋で待っているとしよう。せいぜい頑張れよ坊

 

魔王:絶対持って帰ってくるからな!

 

ズメイ:さて、簡単に持って来れることやら・・・

 

魔王:失礼す・・・します!

 

カトリーヌ:正解です魔王様。さぁ、ご自分で探すか司書に聞いてみてください。くれぐれも威圧的な態度を取らないようにですよ

 

魔王:我は蔵書の場所なぞ分からんぞ・・・、いつも臣下が持ってくるし

 

カトリーヌ:では司書に聞きましょう。ほら、ちょうどそこにおひとりおられますよ

 

魔王:む?あの者は司書であるのにどうしてあれほど隅で縮こまっているのだ。あれでは居ないも同然ではないか

魔王:おい・・・じゃ、なかった。あの、少し聞きたいことがあるのですが・・・

 

エレン:ひっ!?

 

魔王:え

 

エレン:な、な、な、なんですか誰ですか私みたいな社会のゴミに何の用ですかぁ!?

 

魔王:あ、あの・・・

 

エレン:ち、近づかないで下さぁい!不幸が移っちゃいますぅ〜!

 

魔王:なんなんだこの司書は・・・

 

カトリーヌ:この司書こそが私の友人ですよ。ほらエレン。不幸が移るわけないでしょ、こっち来なさい

 

エレン:カトリーヌ!?なんでここにいるんですかぁ!貴方今までこっちに来たことなんてなかったじゃないですかぁ・・・

 

カトリーヌ:用があるのは私ではないのよ。ほら出てきなさい・・・!禁書庫に隠れようとしない!

 

エレン:ぴやあ・・・!カトリーヌが虐めますぅ・・・!

 

魔王:あ、あの、カトリーヌやめてあげた方が・・・

 

カトリーヌ:ふん!

 

エレン:ひゃあ!

 

カトリーヌ:利用者が来てます。対応してください

 

魔王:すまな・・・いや、すみません。探しているものがあるのですが・・・

 

エレン:お、

 

魔王:お?

 

エレン:お、男の人です!?やだやだむりむり怖いですぅー!

 

魔王:え、ちょ、ちょおー!?

 

 

_______

魔王:はぁ、はぁ・・・意外と・・・足は・・・速いのだな・・・

 

カトリーヌ:エレン出てきなさい。魔界図書館司書が聞いて呆れますよ

 

エレン:ひっ!ひぃ・・・!

 

魔王:や、カトリーヌ大丈夫だ・・・。あー、エレンさんと言いましたね。そのままでいいので頼み事を聞いてくれな・・・せんか?

 

エレン:は、はい・・・

 

魔王:実は、僕は今300年前の魔界学校の卒業文集を探していて・・・

 

エレン:さ、さんびゃくねんまえの・・・ですか・・・

 

魔王:ん?

 

エレン:ななななんでもないですぅ!

エレン:あ、あのぅ・・・、その、300年前の卒業文集である意味などは・・・

 

魔王:ああ、いや実はズ・・んむむー!?

 

カトリーヌ:(小声)魔王様、ズメイ様の名を出せば正体がバレますよ

 

魔王:・・・ぷはっ!そうか・・・。え、えっと・・・じ!実は僕は卒業文集について研究していて・・・

 

エレン:??あ、あの失礼ですが、卒業文集から学べることなんてないですよ・・・?

 

魔王:(小声)カトリーヌ!?我、憐(あわ)れまれてる感じがするぞ!?

 

カトリーヌ:(小声)魔王様の言い訳が見苦しすぎるからでしょう。もっとそれっぽい理由付けをしてください

 

魔王:え、えっと・・・

 

エレン:さ、300年前のものにこだわらないのでしたら別のものをおすすめします・・・!

 

魔王:あ、いやそれはよくない・・・

 

カトリーヌ:はぁ、エレン。実はこの人の息子さんが今度卒業文集を書くそうなんだけど、私の文章を参考にしたいそうなの

 

エレン:カトリーヌのを・・・?

 

カトリーヌ:ええそうよ

 

エレン:な、なら大丈夫、です・・・!確かにカトリーヌのものはとっても良い文章ですもんね!すぐ取ってきます!

 

魔王:・・・すまん、助かった

 

カトリーヌ:ほんとですよ。もっと感謝してください

 

エレン:お、おまたせしました・・・

エレン:あの、見るのはカトリーヌのものだけにしていてくださいね・・・

 

魔王:うん?よかろう!

 

カトリーヌ:(小声)魔王様、言葉遣い

 

魔王:わかりました!

 

エレン:・・・はい、それでは1週間後までに返却してください・・・

魔王:ありがとうございました!

 

魔王:ふぅ〜、何とか借りることが出来たぞ!

 

ズメイ:お、随分長引いたな坊。待ちくたびれて来てしまったぞ

 

魔王:ズメイ!ふふん!ちゃんと借りてきたのだぞ!

 

カトリーヌ:(小声)私のサポートあってのことですけどね

 

魔王:とにかくこれで課題達成だ!

 

エレン:すみませぇん!利用者カードを渡すのすっかり忘れ・・・・・・

 

魔王:ん?

 

エレン:お、おおお兄様!?なんで、どうしてこちらに!?ああ!だ、だめですその文集を返してくださぁい!?

 

魔王:・・・『お兄様』?

 

ズメイ:あぁエレン。いつまで経っても俺に見せてくれないから業を煮やしていたんだぞ

 

魔王:じゃあ、まさか300年前の卒業文集に限定したのって・・・

 

カトリーヌ:私とエレンは同学年でしたから。もちろんエレンのものもありますよ

 

エレン:あああああお兄様ぁ!!だめだめ見ないでくださぁい!

 

カトリーヌ:こらエレン。図書館の本を破る気ですか。大人しくしていなさい

 

エレン:でも、でも・・・!

 

ズメイ:ほぅ?『わたしの大好きで尊敬する人』か・・・

 

エレン:ああああ!

 

ズメイ:「私には、大好きな人がいます。それは剣術がすごくてとっても努力家なズメイお兄様です。」・・・そうかエレン。俺の事をそう思ってくれていたのか

 

エレン:うぅ〜!

 

カトリーヌ:ズメイ様。それくらいにしてやってくださいませ。エレンが死にます

 

ズメイ:ははっ!なに、頑なに見せてくれないから悪口でも書かれたかと思ったが・・・、随分可愛らしい文章じゃないか。なぁエレン?

 

エレン:うっ、うぅ・・・。いっそ殺してください・・・!

 

ズメイ:こら、そんなに唇を噛み締めると血が出るぞ。たとえ自分で付けたとしても可愛い妹に傷がつくのはいただけないな

 

エレン:お兄様のせいではないですかぁ・・・!

 

ズメイ:俺に見せなかったエレンが悪い。で?続きはっと・・・

 

エレン:お兄様!エレンをこれ以上いじめないでくださぁい!

 

カトリーヌ:はぁ。ズメイ様も意地悪ですね。そんなに見たいなら私が文集を持ってきますのに

 

魔王:え、じゃあ・・・、我もしかして・・・ただ、だしに使われただけ・・・?

 

カトリーヌ:はい

 

魔王:我を、魔王を、だしに・・・?

 

ズメイ:ああそうだ坊。すっかり忘れていたな。約束通り坊の仕事を少し減らしてやろう

 

魔王:そ、そうだぞ!我はそのために頑張ったのだぞ!

 

ズメイ:と、言うわけだ。カトリーヌ嬢、坊の執務室にある書類は全て片付けておいた。各部署へ持って行ってくれ

 

カトリーヌ:あの量をおひとりでなされたのですか!?

 

ズメイ:まぁ造作もないことだ。その代わり午後からは俺と剣術の訓練をしような坊

 

魔王:え

 

ズメイ:どうした?仕事が減って嬉しいだろう?

 

魔王:こ、こ、こ・・・こんなの詐欺ではないかー!

 

エレン:いい加減お返しくださいませお兄様ぁ!!

 

 

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